自宅の居間にある卓袱台に向かい、リズミカルな音を立てて赤ペンで答案用紙にマルやチェックなどを書き込んでいく男の方へと俺は歩を進めた。

おい、イルカ
その男の名を呼べば、
先生。
振り向きもせずに、訂正しろと告げられる。
はあ、と溜息を吐いて、俺はもう一度その男の名前を呼ぶ。

今度は、訂正されないように。

――イルカ・・・先生
よし。どうした、サスケ?
俺の呼びかけに満足したのか、目の前の男――うみのイルカはニッコリと笑いながら顔をこちらに向けてくる。



俺はイルカが好きだった。
  
アカデミーに入ってから暫くの間は、嫌いな人間の部類に入っていたはずなのに。
いや、それ以上だった。
他人に一切干渉しない俺が、イルカを見ると苛々して仕方がなかった。
だから、関わりたくないとばかりに接触を避けていたのに。
卒業間際のある日。
 
それが恋だと知った。
 
  
もともと、恋愛や色事に興味がなかった俺はどうすればいいかも分からず。
イルカを好きだと分かったその日に、本人にそれを告げた。
 
イルカは目を丸くして驚いていたけれど、
暫くして、困った表情で笑いながら俺にこう言った。
 
――ありがとう。俺も、サスケが好きだぞ
 

違うよ、先生。

その好きは
 
俺の好きと
 
同じじゃない。
 

そう思ったが、あえて言葉にせずに黙っておいた。
 
そして、それからと言うもの。
幾度と無くイルカの家を訪れては共に食事をしたり、任務がない日などは泊まり込んだりしている。
 
そんな事を繰り返している間に、気付けば俺は今年で17と言う年になっていた。
 


17になっても、イルカにとって俺はまだ生徒で。
扱いや言葉遣いはこの数年殆どと言っていい程変わっていない。
 
俺は、微笑むイルカに手を伸ばし、解かれた彼の長い髪をゆっくりと梳いた。
気持ちよさそうに目を瞑るイルカに若さ故の熱が込み上げてくるが、まだ手を出す事は出来ない。
ちゃんと、大人として。
男として認められてから、イルカが欲しかったから。
 
何度か髪を梳いていると、ギクリと俺の体が強張った。
髪を梳いていた為に持ち上がった髪の隙間から、イルカの左首の根本が鬱血しているのが見えた。
殴られたワケでもなく、怪我をしているわけでもなく。
 
明らかに、それは所有痕。


不意に浮かぶのは銀色の髪の上忍。
俺の、上司。
 
ぎりりと唇を噛むと、俺はイルカの耳元に唇を持っていく。
 
・・・好きだ・・・
そう囁くと、ぴくりとイルカの体が揺れた。
耳が弱い事はもう随分と前から知っている。
そして、イルカはうっすらと瞼を開けて俺を見つめた。
・・・俺も好きだぞ、サスケ
・・・ウソばっかり
ウソじゃないよ。本当だ

その言葉に、俺はイルカの首筋に顔を埋めた。

サスケ?
――ああ、そうだな。信じる。
イルカは嘘は付かない。
絶対に。

だから、イルカは俺の事を本当に好きだってコトは分かってる。
 
  
ただし

俺は二番目に・・・・ってコトだろうけど。
 
 
そして


それはアイツが生きている限り




――― 永遠に変わることはない。
  

NARUTO:サスケ&イルカ

か…描(書)いちゃった(爆)。
すいません…、もう驚くくらいサスイルに萌を感じてしまいまして(笑)。
やはりサスイルも、ナルイルもカカイル前提であって欲しいです。
大人にはかなわないけど、でも、好きって言うのが萌ポイント。

タイトルの【弐。】は、もちろんイルカはカカシの次にサスケが好きという意味で、NO,2です(酷いな…)。