〔さいごまで、ちゃんと、きいてね〕
思う様に動かない唇を何とか動かしながら、俺は旦那の瞳を見つめた。
旦那の身体や、唇はずっと震えていて。
それが何とも、頼りなくて。
俺は、両の手でその震えが治まる様にと、あやす様に旦那の手を包み込んだ。
ああ、やっと。
やっと、旦那に言う事が出来る。
今までずっと我慢してきたんだ。
今までずっと抑えてた。
でも今はもう、抑える必要も、我慢をする必要もないんだ。
「あのね、いっかいきりしか、いわないから、ちゃんと、きいてね」
そう言うと、旦那は聞き分けのない子供の様に頭を横に振った。
「だんな、おねがいだから、きいて?」
未だ力無く首を振る旦那に困ってしまうけど。
どうしても、言いたい事だから。
「あのね、ずっと、・・・ずっと、だんなのこと、すきだったよ」「何で・・・っ! 何で今更そのような事を・・・・っ!!」
だって。
だって、俺様は真田忍隊の長だよ?。
言えるわけないじゃない。
主君に愛してるだなんて、言えるわけないじゃない。
だから、この想いを言う時は。
この時だと決めてたんだ。
「いやだ・・・、さすけぇ・・・」
「ごめんね、だんな・・・」
「さすけ・・・?、佐助っ!!」
――
アンタが愛しくて、仕方がなかったよ――
俺の最後の言葉は、声にならなかったけれど。
俺の最期に、アンタが側にいてくれて
本当に、幸せだよ。