ねえ、イルカ先生はどうして忍になったの?
 ――きっとイルカ先生はこう言うだろう。
“父や母が忍だったように、自分も立派な忍になりたくて”

――と。
 
なのに。
 
イルカ先生はアカデミーから持ち帰ったテストの答案の採点をしていた手を止めて、ゆっくりと俺の方へ体ごと向き直した。
「え?、俺ですか?。忍になった理由なんてつまらない理由からですよ」
「えー、なになに?。どんな理由ー?」
突然何を言い出すんだと言うような表情でそう告げるイルカ先生の、その
“つまらない理由”
を聞くべく、俺は四つん這いでイルカ先生の側へと寄る。
そして、俺の問いにイルカ先生の返事はと言うと。
 
「忍になったら、さっさと死ねると思って」
  
―――は?。
 
「自害せずに、そして両親にも顔向け出来きて手っ取り早く死ねる方法って、この里ではやっぱり忍ですよね」
さらっと、ごく普通に。
何でもないことのように口から零れ出てきた言葉は、俺の想像していた答えとは随分かけ離れていた物だった。
あまりのことに俺は何と返せばいいか分からなく、暫く呆然とイルカ先生の顔を見つめることしかできなかった。
 
「カカシさんもそうでしょう?」
黙ったままの俺に、再びイルカ先生が言葉を続ける。
そして、その言葉に俺の心がどきりと跳ねた。
「え・・・。な、何で知ってるの・・・?」

そう。
イルカ先生のその考えは、俺と全く同じものだった。
幼い頃から忍として生きてきたけれど、始めた切っ掛けは今は亡き親父に憧れて始めたもの。
しかし親父が死んでからというものさっさと死ねる様にと、数も数え切れない程の任務を受けた。
そして、今に至る。

今じゃそのお陰で力が付いてなかなか死ねやしない。
けれど、今はもうそんな気持ちも何処かに消えてしまった。
だって、俺には愛する人が出来たから。
 

けれども。
 
俺の愛した人は、俺と同じ理由で忍になり、
そしてその考えは今も昔も、全く変わっていないみたいだ。
 
 
「類は友を呼ぶってやつですかね?分かりますよ。
それに・・・・、」
そう言ってイルカ先生は優しく微笑んで、再び唇を動かした。
「だからあなたとこうして付き合えたんですし」
「イルカ先生?」
何が言いたいのかが分からなくて、俺は首を傾げてイルカ先生の手を取った。
「俺もあなたも生に執着もないし、どっちかが死んでもいずれ自分も死ぬんだから悲しくないでしょう?。
俺は、そう思っている人としか付き合えないんですよ」
  
―――ねえ、イルカ先生。
 
それは俺が死んだ時に悲しまない為の自己暗示なのか、慰めなのか。
  
・・・それとも。
 
明日から久方振りにAランクの任務に就くアナタに、もしもの事があった時の為の俺への言い訳なのか。
 
どれに当て嵌まるのか知りたかったけれど。
 
取りあえず。
俺は。

目の前で微笑んでいるイルカ先生の手を引き寄せて、


つまらないことばかり吐き出すその唇を塞ぐことに決めた。




NARUTO:カカシxイルカ

え?、これカカイル??(爆)。
すいません〜、ちょっと黒イルカを書きたくなってしまいまして・・・。
(黒イルカというか何というか・・・。)